あなたは【種】に選ばれました──
庭で見つけた春の野草。
摘まんでみると、手元に【春の欠片】が広がった。
風向きとは逆の方角へ欠片の一部が飛んでいく。
春の選定
何も考えないで欠片を追う。
どのくらい歩いたのだろう。知らない場所に着いてしまった。
寒くは無いが、ここはなんだか寂しそう。
永久冬地に運ぶ種
そっと、野草を掲げる。
魔法が発動し、私の種は大地に結びつく。
桜色の欠片が水面のように世界へ広がっていった。
桜結び
親の顔はもう忘れた。
何年も、何年も。この場所で欠片に従い春をつくる。
楽園の始まり
ある日、この地に旅人が迷いこんできた。
旅人は「帰らないの?」と、私に問う。
「帰る場所はここだから」
だって、ここを離れたら、
あなたも私も大好きな【春】が終わってしまうもの……。